美容室のリピート率を上げる組織づくり「売れる美容師」に頼らない経営へ
「新規のお客様は来ているのに、2回目につながらない」
「スタッフによってリピート率にかなり差がある」
「次回予約を取るように言っているけれど、取れるスタッフと取れないスタッフがいる」
「店長やベテランはお客様がつくのに、若手になるとなかなか固定客が増えない」
美容室を経営していると、こんな悩みを感じることがあります。
すると、
カウンセリング研修をしよう。
次回予約をもっと取ろう。
接客力を上げよう。
LINEでフォローしよう。
そんな対策を考えると思います。
もちろん、どれも必要です。
でも僕は、美容室のリピート率を上げることを考えるとき、もう一つ大切な視点があると思っています。
それが、
「個人の能力の問題として考えるのか、組織の問題として考えるのか」
ということです。
僕は長く美容室を経営してきて、リピート率は単純に「その美容師の接客力」を表す数字ではないと考えるようになりました。
むしろ、
その美容室が、お客様に提供したい価値をどれだけ組織として再現できているか。
それが表れる数字の一つがリピート率なのではないでしょうか。
美容室のリピート率を上げるには、「リピートできる美容師」を増やそうとするだけではなく、
リピートが生まれる行動を、組織の標準にする。
ここまで考えることが大切です。
リピート率が高いスタッフの「センス」で終わらせない

どこの美容室にも、お客様がつきやすい美容師がいると思います。
指名が多い。
次回予約も自然に取れる。
店販も売れる。
紹介も多い。
そして、そのスタッフを見て、
「あの人は接客が上手だから」
「コミュニケーション能力が高いから」
「美容師としてセンスがあるから」
と片付けてしまう。
僕は、ここに大きな機会損失があると思っています。
なぜなら、
その人が何をしているのかを分解していないからです。
例えば、リピート率の高いスタッフをよく見てみると、
最初のカウンセリングで悩みだけでなく生活背景まで聞いている。
施術中に、今日何をしているのかを説明している。
仕上げのときに、次に起こりそうな髪の変化を伝えている。
自宅で何をすればいいかを説明している。
次回来店の目安を伝えている。
次回やりたいヘアスタイルまで共有している。
そんな小さな行動を積み重ねている可能性があります。
つまり、
結果だけを見るのではなく、結果を生んでいる行動を見る。
これが組織づくりのスタートです。
美容室のリピート率がスタッフごとに違う本当の問題

スタッフによってリピート率が違う。
もちろん、経験年数や技術力によって多少の差が出るのは自然です。
でも、同じ美容室なのに、
Aさんが担当すると、しっかり説明される。
Bさんが担当すると、ほとんど説明がない。
Cさんはホームケアまで伝える。
Dさんは商品を売るのが苦手だから何も言わない。
店長は次回予約を必ず提案する。
若手は断られるのが怖くて言わない。
こうなっていると、お客様から見れば同じ美容室でも、担当者によって別の店のような体験になります。
これは個人の問題だけではありません。
組織として「何をお客様に届けるのか」が決まっていない状態です。
美容室には昔から職人気質があります。
技術を見て覚える。
接客も先輩を見て学ぶ。
カウンセリングも経験で上手くなる。
もちろん経験は必要です。
ただ、すべてを経験に任せると、上手な人の中にノウハウが蓄積され、会社には残りません。
これが属人化です。
そして属人化している美容室では、
「あの人が休むと困る」
「あの人が辞めたら売上が落ちる」
「新人が育つまで何年もかかる」
という状態になりやすい。
リピート率の問題に見えて、実は組織設計の問題なのです。
リピート率を「評価」ではなく「改善の数字」にする

ここも大切です。
リピート率をスタッフ別に出した瞬間、
「あなたは低い」
「○○さんは高い」
という評価だけに使ってしまう美容室があります。
これをやると、スタッフは数字を隠したくなります。
僕なら、
リピート率は人を責める数字ではなく、改善する場所を発見する数字
として使います。
例えば、新規のお客様は来るけれど2回目が少ないなら、
初回カウンセリングなのか。
仕上がりの共有なのか。
次回来店の必要性が伝わっていないのか。
ホームケア説明なのか。
次回予約の提案なのか。
どこでお客様との関係が切れているのかを考える。
逆に、2回目までは来るけれど、その後に離れてしまうなら、別の原因を考える必要があります。
毎回同じ提案になっていないか。
お客様の変化を拾えているか。
前回の情報がカルテに残っているか。
将来のヘアプランを共有できているか。
数字を「良い・悪い」で終わらせず、
どの工程に改善余地があるのかを発見するために使う。
これだけでも、スタッフとの向き合い方は大きく変わります。
美容室のリピート率を上げるなら「来店から退店まで」を分解する

では、何を仕組みにすればいいのでしょうか。
僕なら、お客様の来店を一度バラバラに分解します。
予約。
受付。
カウンセリング。
施術。
シャンプー。
仕上げ。
アフターカウンセリング。
ホームケア提案。
会計。
次回予約。
来店後フォロー。
そして、
それぞれの工程で、お客様に何を感じてほしいのかを決めます。
例えばカウンセリングなら、
「ちゃんと私の悩みを理解してくれた」
施術説明なら、
「なぜこの施術をするのか分かった」
ホームケアなら、
「家で何をすればいいか分かった」
次回予約なら、
「なぜ次にこの時期に来る必要があるのか分かった」
という状態です。
これが決まれば、スタッフに、
「もっと接客を頑張って」
と言う必要がなくなっていきます。
必要なのは精神論ではなく、
お客様に届けたい体験を工程ごとに定義すること
だからです。
カウンセリングを「上手な人の会話」から組織の型へ変える

リピート率改善で特に重要になるのがカウンセリングです。
ただし、
「もっとお客様の話を聞こう」
だけでは、人によって解釈が変わります。
だから質問をある程度決める。
今、一番気になっていることは何か。
普段どんなお手入れをしているのか。
過去の施術履歴はどうか。
今日どうなりたいのか。
数か月後、どんな髪でいたいのか。
何をされると嫌なのか。
こうした確認項目を共通化する。
そして大切なのは、聞くだけで終わらせないことです。
お客様から聞いた悩みに対して、
今日は何をするのか。
なぜそれをするのか。
自宅では何をすればいいのか。
次はいつ何をするのか。
ここまでつなげる。
するとカウンセリングが、単なる「注文を聞く時間」ではなく、
お客様と一緒に髪の未来を考える時間
へ変わります。
次回予約を「予約を取る仕事」にしない

次回予約についても同じです。
「次回予約をもっと取ってください」
と言われても、若いスタッフほど苦手だと思います。
なぜなら、
予約を取ることが目的になると、
営業している感覚になるからです。
僕は、次回予約は予約を取る仕事ではなく、
今日の続きのヘアプランを伝える仕事
だと思っています。
例えば、
「今日はここまで整えました。次は6週間くらいすると、この部分が気になってくると思います。その頃にもう一度状態を見せてもらえると、きれいな状態を維持しやすいですよ」
と説明する。
そのうえで、
「もし予定が分かれば、次の枠を取っておきますか?」
と聞く。
これなら、予約を売っているわけではありません。
お客様の未来について説明した結果として、次回予約があるだけです。
この考え方までスタッフ全員で共有できれば、次回予約は一部の「営業が得意な美容師」だけの仕事ではなくなります。
店販もリピートも同じ線上にある

僕は、店販とリピートを別々に考えない方がいいと思っています。
美容室できれいになった。
でも、自宅で毎日どんなケアをするかによって、次回来店までの髪の状態は変わります。
だからホームケアを伝える。
必要なら商品も提案する。
そして次回来店時に、
「前回から髪の状態はどうでしたか?」
と確認する。
ここまでつながって初めて、
サロンとお客様の関係が「来店した日だけ」ではなくなります。
店販とは商品を売る仕事ではなく、
美容室の外にいる時間まで、お客様のきれいを支える仕事
と考えることができます。
この考え方が組織に共有されると、
「商品を売るのが苦手です」
という問題も変わってきます。
売るのではなく、必要なケアを説明する。
その結果として商品という選択肢がある。
そう考えれば、カウンセリング、施術、店販、ホームケア、次回予約、リピートは全部つながっています。
「マニュアル化すると接客が機械的になる」は本当か

仕組み化の話をすると、
「マニュアルにすると接客が機械的になりませんか?」
と言われることがあります。
僕は逆だと思っています。
決めるべきなのは、
「この言葉を一字一句言いなさい」
ではありません。
何を確認するのか。
何を説明するのか。
何を記録するのか。
何を次回につなげるのか。
という最低基準です。
その基準の上で、言い方はその美容師らしくていい。
例えば料理でも、レシピがあるから全員同じ人間になるわけではありません。
基本工程が決まっているからこそ、その上に個性を乗せることができます。
美容室も同じです。
標準化するのは個性ではなく、品質です。
ここを間違えないことが大切だと思っています。
店長の仕事は「できない人を注意すること」ではない

組織論で考えると、店長やマネージャーの役割も変わります。
リピート率が低いスタッフに、
「もっと頑張ろう」
「次回予約をちゃんと取ろう」
「もっとお客様と話そう」
と言い続けても、なかなか数字は変わりません。
必要なのは、
どこまでできていて、どこからできていないのかを見ることです。
カウンセリングはできている。
施術説明もできている。
でも次回提案がない。
それなら改善する場所は一つです。
別のスタッフは、
次回予約は取れている。
でも既存客が離れている。
それなら次回予約以外に原因があります。
このように分解すると、
教育が「注意」から「改善」に変わります。
そして、
リピート率の高いスタッフがやっていることを共有する。
ロールプレイする。
実際にやってみる。
数字を見る。
修正する。
また実践する。
このサイクルを回す。
これが僕の考える組織としてのリピート率改善です。
美容室のリピート率を上げる5つの組織ルール
ここまでを実際の店舗運営に落とすなら、まず5つから始めると分かりやすいと思います。
1.リピート率の定義を統一する
新規と既存を分け、何日以内の再来を計測するのかなど、自社のルールを統一します。
数字の定義が違えば、正しい改善はできません。
2.リピート率の高いスタッフの行動を分解する
「センスがある」で終わらせず、
何を聞いているか。
何を説明しているか。
いつ次回提案しているか。
何をカルテに残しているか。
を観察します。
3.最低限の顧客体験を標準化する
カウンセリング、施術説明、ホームケア、次回提案、カルテ記録など、「これだけは全員やる」という基準を決めます。
4.数字を責めるためではなく改善のために使う
リピート率が低かったら、
「誰が悪いか」
ではなく、
「どこでお客様との関係が切れているか」
を探します。
5.成功した方法を会社の資産にする
一人のスタッフが成果を出したら、その方法を本人だけのものにしない。
言語化して共有する。
これを繰り返すことで、個人の経験が会社のノウハウへ変わっていきます。
僕がBIJU Systemを「商品」だけで終わらせたくない理由

僕たちがViváte BIJU System「美寿」を開発している理由も、この考え方につながっています。
単に新しいトリートメントを美容室へ置きたいわけではありません。
技術。
カウンセリング。
施術説明。
ホームケア。
店販。
次回予約。
教育。
これらを一つにつなげたい。
美容師という仕事には、本当に大きな価値があります。
お客様をきれいにする。
自信を持ってもらう。
毎日を少し前向きにする。
でも、その価値が一部のトップスタイリストだけに依存してしまえば、会社として広げることができません。
だからこそ、
良い美容師を増やすだけではなく、良い美容を再現できる組織を作る。
僕はここが大切だと考えています。
BIJU Systemも、単に髪をきれいにするための商品ではなく、施術工程やホームケア、カウンセリング、教育までつなげることで、美容師がお客様へ価値を伝えやすくする仕組みとして育てていきたいと思っています。
リピート率は「また来た人数」ではなく組織への信頼

美容室のリピート率を上げる方法を調べると、
次回予約。
LINE。
カウンセリング。
接客。
カルテ。
アフターフォロー。
さまざまな施策が出てきます。
どれも必要です。
でも、一つひとつをバラバラに導入しても、スタッフによってやったりやらなかったりすれば成果は安定しません。
僕が美容室経営で大切だと思うのは、
「良いことを知っている組織」ではなく、「良いことを全員が実行できる組織」を作ることです。
一人のカリスマ美容師に100人のお客様がつく。
それも素晴らしい。
でも、
10人の美容師が、それぞれのお客様に一定以上の価値を届けられる。
そして新人が入っても、その価値を学び、再現できる。
その方が会社としては強い。
美容室のリピート率は、
「また来てくれた人の割合」
という数字だけではありません。
僕は、
お客様が担当者だけではなく、その美容室の考え方や提供する価値を信頼してくれているかを見る数字
でもあると思っています。
だから、
美容室のリピート率を上げたいなら、人を責める前に仕組みを見る。
トップスタッフの才能を褒めて終わるのではなく、その行動を会社の財産にする。
そして、
誰が担当しても、お客様が
「ここなら安心して任せられる」
と思える美容室をつくる。
それが、
個人技に依存しない、本当の意味で強い美容室組織につながっていくと僕は考えています。